タイで想う日々!

                      by 匠武士

 

 


 チェンマイ・ロイクラトン 世紀のヴィジュアル・イベントに遭遇!!>

ロイクラトン(灯篭流し)はソンクラン(タイ正月)と並ぶタイの大きな祭事である。特にチェンマイのロイクラトンはイーペン祭りと呼ばれ、コムロイ(コムファイ)を上げることが特色。家族や友人、恋人と一緒に、厄払いや幸せへの祈りを込めて、空にあげる熱気球がコムロイである。このコムロイを一斉に打ち上げる催しの存在はTVや新聞上では知っていた。しかし意外とその場所に行ったチェンマイ人はまだ少数。この「知る人ぞ知る」壮大なヴィジュアル・イベントの模様を完全ドキュメントでご紹介する。

07年11月24日、場所はチェンマイ中心部から北に10キロ、メージョー大学裏手の敷地。
午後5時10分。国道1001号から横道に入り、バイクを数分走らせると路駐の車が目立ち始める。ロイクラトン特有の花飾りをした山車も並び、警察官が交通整理。もう現場は近い。小さな川にそって人が歩いている。どうやら車はここまで、バイクを止め、人の波に入っていく。

15分ほど歩くとゲートが見えてくる。YEE PENG SANSAIと書かれた垂れ幕が架かる(サンサイとはこのあたりの地域名)。とある宗教団体が主催なので、スピリチュアルな匂いが強かったらどうしようと最初は心配していたが、そんな緊張感も無く、ゲート前ではランナーの伝統舞踊が披露されている。タイ語の後に英語での解説アナウンスもあり、見れば白人ら外国人の姿も多く、ビデオ、スチールのカメラを抱える報道陣もかなりの数だ。
ゲートをくぐると、学校のグラウンドほどの敷地が広がっていて、細長い赤じゅうたんの先には円形の階段状のステージが。その上の半円ドームの中にはライトアップされた黄金の大仏が光り輝く。
敷地には等間隔に細長い点火用スタンドが並べられている。なるほどこうすれば何百ものコムロイを混乱せずに打ち上げられる。敷地の端には既に報道陣がカメラの場所取り。予想通りイントレが組まれ、そこにはタイのメディアに混じってNational Geographicなど世界的プレスの張り紙もあった。

 

私が一番興奮したのは35ミリフィルムカメラを発見したとき。しかも移動レールに乗せられている。まるで映画かCMの撮影現場! このとき私はこの厳正な宗教行事が壮大なるヴィジュアル・イベントであることを実感した。いやがおうにも期待が高まる。
イントレに上ることは当然許可されないので、白いお堂の階段に場所取り。タイやシンガポールのプレスに混じって、報道許可証も無いのに笑顔で割り込む。このへんのおおらかさがタイの良さ!
6時30分、重々しい音楽が流れる中、山車パレードが場内に入場してくる。気がつけばステージの円形の階段には既に数十名の僧侶が座禅を組んでいる。テープでお経が流れる。最初は場内中央まで入場してきた山車が、今度はゲートをくぐると90度ターンをして場外へ出て行く。なかなか行事が進行しない。プレス陣もイライラ。こういうときのためにタイムテーブルなど欲しいが、そんなものあるのだろうか?

トランシーバーで場内の状況を話す僧侶。記録ビデオを回す僧侶も。

突然僧侶のステージの周りから火花と煙が上がる!

7時30分、さらに僧侶(高僧)たちが現れ、円形の階段を上がっていく。マイクの前に僧侶が立ち、タイ語で話し出す。場内では座禅を組んで僧侶の話に集中する人々の姿。タイの報道陣の中にも手を合わせる者がいる。このあたりは仏教国タイ、我々には真似できない。これが噂の瞑想の時間だろうか? 延々と続く僧侶の言葉。
敷地の内外からは待ちきれないのか、コムロイが散発的にあがる。少年少女たちが現れ、彼らの手元のローソクに火が付けられて行く。場内のライトが消え、暗闇の中に何百ものローソクの火が浮かぶ。少年たちはゆっくりと円を描いて歩き始める。ローソクの火がぐるりと円形ステージのまわりを囲むと、その火は消される。また場内は暗闇になる……。
8時40分。突然大きな火花がステージの周りに上がる。カメラのシャッターを夢中で切る私。気がつけば場内の数百の点火用スタンドにはすべて火がつけられている。やっとコムロイ打ち上げか!

ローソクの火だけでも十分ロマンチック。


「どうぞ撮影を」と一部でプレ打ち上げ開始。

しかし、ここからが驚きの時間だった。敷地の片隅、ゲートに近い場所からコムロイがあがり始める。場内には「さあカメラで撮影をどうぞ」とのアナウンス。これはたまげた! コムロイを実際にあげる人たちは十分撮影できない、だから彼らのための撮影タイムなのだ! 気配りし過ぎ!

8時50分。いよいよ一斉にコムロイが用意される。熱を気球内に溜める時間が必要なのだ。数百のコムロイがムクムクとその姿を現し始める。それだけでも壮観な絵。自分の心臓の高鳴りが聞こえそう。デジカメのメモリーが残り少ない。かといって、ここでカードを交換する時間は無い! 
そして、8時55分。現場に着いてから既に3時間以上! ついにアナウンスの掛け声とともに一斉にコムロイが空に放たれる! 目の前がオレンジ色に染まる。信じられない幻想の世界が眼前に広がる。そして、何百ものコムロイがチェンマイの空へ舞い上がっていく……

熱気球の中にたっぷり熱い空気を送り込み……


ついに打ち上げ! 言葉にならない光景。

次の瞬間、私は駆け出していた。こんなところでボヤボヤしていたら抜け出せなくなる。走りながら周りを見ると場内は完全な撮影タイム。あちらこちらでフラッシュがたかれている。そして恋人たちは肩を抱き合いながらコムロイを見つめる……ああ、これはまさに日本のクリスマス。
その直後には大迫力の花火が上がり、場内から大歓声。私は全速力で駆け抜けながら思った……「ロイクラトンって『灯篭流し』じゃなかったけ?」
いやいやこれがチェンマイ・ロイクラトン。
このコムロイ一斉打ち上げ、今後急速に知名度を上げることは間違いない。この世紀のヴィジュアル・イベントは、もしかしたらタイを代表する行事に成長する!
来年のご取材はGPAを通じてどうぞ!
 匠武士 タイ愛好家 HPタイで想う日々 http://www.taideomou.com/


 

 

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