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第4回パタヤ・ミュージック・フェス観戦記(2005.3.18?3.21)
四季の変化のとぼしいタイで一年の経過を感じさせてくれる祭り事といえばソンクラーン
だが、私は水を掛けられるのが嫌いなのでほとんど部屋に引きこもっている。従って、あ
あ、去年のソンクラーンはああだったなあという回想ができない。一年の節目というもの
がないと月日がますます早く過ぎ去っていく気がするのでなんとかならないものかと思っ
ていたが、3年前からそんな心配がなくなった。タイ最大の音楽祭、パタヤ・ミュージッ
ク・フェスティバルが毎年の恒例行事として定着してきたからだ。今では毎年、ソンク
ラーンのひと月ほど前に、そうか、もうパタヤの季節かとしみじみ一年の流れを感じるこ
とができる。

パタヤ音楽祭は今年で4回目。昨年あたりからややマンネリ感が漂い、今年はちょっとし
た勝負年になるのではないかと思っていたら、某芸能大手が主催を降りたとかでフォー
マットが大幅に変更になった。MTVが絡んでアジア勢のエントリーが大幅に増え、ほと
んどのミュージシャンが3日間で2回演奏するプログラムが採用されたのである。私はかね
がねアジアの(アイドルではなく)ロックバンドがもっとタイに来ないものかと思ってい
たので前者については大歓迎。さらに過去3回の音楽祭では毎回見たいステージのバッ
ティングに悩まされてきたので、後者についても大賛成だ。今年は気合いの入れ甲斐があ
りそうだとみた私は、渋滞が予想される初日の移動を避け、前日の3月17日にパタヤ入り
した。
今年のステージは北パタヤのラブ・ステージ、そこからやや南に下りたピース・ステー
ジ、南パタヤの船着場そばのワールド・ステージの3つ。プログラム片手に、おもしろう
そうなステージを目指してこの3つを行き来する点は従来と変わらない。しかし、ことは
そう簡単に運びそうにはなかった。ラブとピースの移動はなんとか徒歩圏内だが、それで
も混雑時には15?20分はかかる。また、ラブもしくはピースからワールドへの移動は徒歩
だとかなりきついのでバイクタクシーに頼ることになるが、メインロードの一部が通行止
めになるため、驚異的な大回りをしなければならない。良心的なバイクタクシーで60B、
ぼられると100Bだ。さらに、人気バンドのステージは満員電車並みに混むため、いった
ん中に入ると簡単には外に出られない。ちらっとあっちのステージを見に行こう、などと
気軽に考えてはいけないわけだ。コンサートは毎日夕方の6時ごろから深夜12時まで、3
ステージで並行して行われるが、ステージ間の移動は多くて1日2回。もしくは開き直って
どれかひとつのステージに張りついてしまった方が賢明だ。

1日目
ワールド・ステージで人造人間タターンがフェロモンをまき散らしているであろう初日
(18日)の午後7時、私はまずラブ・ステージから観戦をスタートさせた。今回期待して
いるバンドのひとつ、フィリピンのバンブーを拝むためだ。別にこのバンドを知っていた
わけではなく、アジア最強の音楽大国だから上物に違いないと適当に選んだだけなのだ
が、これが当たった。フィリピンのバンドなどタイ人が知っているはずもなく、いわばア
ウェーでの演奏になるわけだが、そんなプレッシャーを微塵も感じさせないド迫力のパ
フォーマンスを見せてくれた。あまりに満足したのでもうきょうはこのままライブ観戦を
切り上げてバービアに繰り出そうかと思ったくらいだ。後に某アジア音楽評論家に聞いた
ところ、このバンドのボーカル=バンブーは、やはり今回の音楽祭に参加しているリバー
マヤというバンドの元ボーカルで、ヤク中の治療のためずっとアメリカに行ってたらし
い。フィリピンにはこんなバンドがごろごろしているのか、タイはかなり負けてるんでは
ないかと老婆心がうずいたが、彼らもやはりフィリピンでカリスマ的な人気を誇っている
と聞いて少し安心した。
引き続きラブ・ステージに登場したのは、タイが誇る骨太ロックバンド、TAXIである。彼
らもかなりバンブーのプレイに感銘を受けたらしく、開口一番、いやー、今のバンブーっ
てのはすごかったねーなどと素直に感想を述べている。しかし、TAXIもステージパフォー
マンスの爆発力はタイのロックバンド随一と言われているわけだから、ここはひとつ、タ
イもなかなかすげえとバンブーに言わせてやらなければならない。もちろん、職人気質の
彼らがファンの期待を裏切るような手抜きライブなど見せるはずもなく、バンブーに触発
されてエンジン全開のステージが繰り広げられた。バンブーとTAXI、フィリピンとタイの
夢の競演。アジアン・ロック好きの私はもうこれで140%くらい満足してしまい、今度こ
そ本当にバービアに繰り出そうかと思ったのだが、まだ初日でそれも1時間ちょっとしか
コンサートを見ていないことに気づいてやめておいた。この後、タイの渋谷系と称される
アームチェア、韓国のビジュアル系ロックバンドNEXT、インドネシアのポップスグ
ループMOCCA、タイ随一の前衛派バンドPRUと続き、胃もたれ気味で初日が終了した。

2日目
きのうバンブーで大当たりしたので、この日も同じフィリピンのロックバンド、リバーマ
ヤから観戦を始めることにした。場所は南パタヤのワールド・ステージ。ラブ、ピースは
いずれもビーチロードの内側にある空き地を利用した仮説ステージで、まったく海のそば
にいる気がしないのだが、ワールドは完全に海際にある。夕方になれば風が吹いて気分も
いいし、足元がコンクリートなので砂ぼこりも立たない。場所が離れている分、こうるさ
いガキも少ない。ステージ脇には芝生もある。最高だ。難点は唯一「中心部から非常に遠
い」という一点だが、観戦環境を採点すればラブとピースが40?50点、ワールドが90
点。私は当初予定していた観戦スケジュールを大幅に変更し、ワールドを拠点として観戦
することにした。さて、リバーマヤもさすがバンブーの兄弟バンドだけあって鳥肌が立つ
ほどに見ごたえのあるバンドであった。普通のバンドはフロントマンが抜ければ枯れるも
のだが、先の某アジア音楽評論家によれば、リバーマヤはその爆発力とパワーを格段に進
化させたらしい。私はおおいに満足し、演奏が終わった後にまたしてもウォーキング・ス
トリート(ワールド・ステージのそばにある大人のホコ天)のゴーゴーバーに行きたく
なった。どうやら彼らがときおり繰り出すタガログ語の歌が私に何年か前のマニラの夜を
思い出させ、足が勝手に変な方に向かおうとするのである。しかし、きょうはまだ1つし
かバンドを見ていないのでぐっとこらえた。ところで、リバーマヤの本国での人気はバン
ブー以上らしく、ステージ前にはタガログ語の応援幕を持った親衛隊が陣取っていた。わ
ざわざフィリピンから駆けつけたのか、それとも在タイのフィリピン人なのか不明だが、
インターナショナルと銘打ちながら観客はほとんどタイ人(+女連れ西洋人と日本人が
少々)という状況の中、他のアジアの国の音楽ファンを見るとじんとくるものがあった。
来年、再来年とこの音楽祭を続け、ステージでも客席でも真の国際交流が進むようなイベ
ントに育てて欲しい。
リバーマヤに続き、シンガポール、タイ、ドイツ、マレーシアとワールド・ステージの名
に恥じないラインナップのステージを観戦した後、私はあえてピース・ステージに移動し
てみることにした。出し物はおそらく今回のイベントで一番人気のビッグ・アス。どの程
度殺人的に混んでいるのかこの目で確かめておきたかったからだ。来年以降の観戦の参考
にもなる。そして、状況はやはり悲惨だった。会場の入り口から団子状態。本来ならすぐ
にあきらめるべきところだが、私は某新聞社にいただいたメずるパスモの入り口を発見でき
たため、なんとかもぐりこむことができた。ただ、これはたまたま運がよかっただけで、
プレスパスを持っていてもそれを提示する入り口がどこにあるのかわからず、結局何も観
ることができなかったという話をあちこちで聞いた。客が年々増えるのは喜ばしいことで
あろうが、あまりにも混雑するといずれ愛想をつかされる。どのステージもそれなりに快
適な環境を確保できるよう、知恵をしぼっていただきたい。

最終日
前2日で見たいものはだいたい見てしまったので、この日は初日に衝撃を与えてくれたバ
ンブーのセカンドステージをじっくり拝ませてもらうことにした。こんなぜいたくな観戦
スケジュールが立てられるのも、1バンド2ステージという気のきいたプログラムのおか
げである。海外のミュージシャンがパタヤに滞在すれば音楽業界の国際交流も進むわけだ
から、来年もぜひ採用してもらいたいところだ。さて、初日以上に力のこもったバンブー
のステージを堪能し、あとは大トリのハードコアバンド、エボラを待つだけとなった。パ
タヤ音楽祭は毎回大トリにとにかくハードなバンドを持ってくる。悪ガキを徹底的に消耗
させ、コンサートが終わった後でさっさと家路につかせるための作戦であろう。午後11
時。ガラの悪そうなガキで埋め尽くされた会場に、エボラの怒号が響き始めた。なにやら
芳醇な草の香りまで漂ってくるがそれはご愛嬌。おそらく他の2つのステージもムードは
最高潮に達していることだろう。夜風を受け、踊り狂うガキどもを眺めつつコンサート三
昧の3日間を振り返る。また来年もパタヤに来ることができるだろうか。来年はどんな国
のアーチストがやって来るだろうか。やがてエボラの酔狂なステージも終わると、いよい
よ本当に最後の一曲が流れ始めた。タイの国歌だ。さっきまで暴れまくっていたガキども
が神妙な顔で口をもごもご動かしている。そういえば私はタイ語のポップスが結構歌える
はずなのに、まだ国歌は歌えない。よくよく考えれば恥ずかしいことである。来年はこの
瞬間にきっちりと国歌を口ずさもう。私は三々五々家路に散っていく若者たちの中、朝ま
で国歌の歌唱指導をしてくれそうな娘を探すため、バービア群の方角に足を向けた。(cob)
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