男と女のお話        by Tamami

 

自分らしく生きる為     

 

 退院後2日が過ぎた。シリコンを入れた部分や接合した部分に、まだ痛みが残るが、メオ(20歳)は新しい自分の姿に満足していた。子供の頃から男の子らしい体型ではなく、姉妹に囲まれて育ったメオは、いつの頃からか「自分は女の子に生まれたかった」と思うようになり、そして、ごく自然に男性しか愛せない男に成長していた。しかし今、念願かなって性転換手術を行い、女性の姿を手にいれたのである。

 新しい自分の姿で一番会いたい、そして会うのが怖い相手である恋人のオーム(22歳)に会う為に待ち合わせの場所に向かった。まだ、スカートをはく勇気がなかったし、女性用の服も持っていなかったので、いつものようにジーパンとTシャツで出かけた。

 オームはいつもの笑顔で待っていた。堀の深い精悍な顔にがっしりとした体格のオームは、青空にぬけるような優しい瞳をした青年だった。そのオームが少々瞳を曇らせてメオに言った初めの一言は「とうとう、やっちゃったんだね。」だった。オームはメオの性転換手術に反対していた。しかし、「でも君が、それで幸せだって思うなら、僕はそれで良いと思うよ。」とも言ってくれた。そして2人は、いつものように、行きつけのクラブに行き、

数杯飲んで、心地良いビートに合わせて踊り、酔いも醒めた頃、クラブを出て食事をした。

いつもならオームの部屋かメオの部屋に行き、そこで翌日の昼くらいまでいっしょに過ごすのだが、今日は、それぞれの帰途についた。

 「別れ際にオームは、まだ君の体の方が全快していないからって言ってくれたけど、彼の本音はどこか他のところにあるような気がする・・・。」メオの気持ちは、なんとなく重たかった。予想していたとうり、オームはメオの新しい姿をあまり喜んでくれなかった。

パタヤのビーチから吹く風が妙に暑苦しく感じるメオだった。

 翌日、バービアで働く女の子達の所へ遊びに行き、オームとの事で愚痴をこぼすと、根から明るい彼女達は「男の言う事なんて気にしないのぉ!それより、あんたもっと可愛くなりなさいよ。アタシ達といっしょにお洒落しましょ!」と、まるで、映画「グリース」のサンディーと不良少女達のよう。メオは彼女達のアパートに行き、流行の服を着せてもらったり、化粧をしてもらったり、そして、彼女達とショッピングモールへ新しい服等を買いに出かけた。メオは、この時、心の底から楽しいと思い、女性になれて幸せだと感じた。彼女達に選んでもらった香水の甘い香りが嬉しかった。

 2ヶ月が過ぎ、女性としてのメオはとても綺麗になった。長い髪をレイヤードにし、綺麗にマニキュアを塗り、流行りの服と化粧に身をつつむと、ちょっとしたファッションモデルのようだった。

 今日は久しぶりにオームと会う日だ。新調したシフォンのワンピースにラメ入りのミュールで出かける。この姿でオームとは、もう何度も会っている。

 いつもの笑顔で迎えてくれたオームは言った。「君とは、やっぱり、もうつきあえない。ごめん。」・・・・オームは、男の姿である男性を愛する男であった。ゆえに、女性の姿になってしまったメオを愛せなかった。メオにとっては、いつかは来るであろうと思っていたこの日だったが、やはり辛かった。「いいの。仕方ない。これは私の我侭だから。」と言い、無理に笑って、自分から背を向けて歩き出した。

 バービアの女友達がよく言っている「新しい彼氏みつけるからいいもん!」という言葉が頭の中をぼんやりと通りすぎた。そうしたら、嗚咽して泣いきながら歩いている自分がいた。・・・「いいのよ。私は、私らしく生きていきたいから。これで、・・・これで良かったの。」・・・メオの頬の涙を潮風が優しく吹き飛ばし、シフォンのワンピースの裾を少しだけ濡らした。

VOL. 40の内容

 

クリックするとコーナーに

VoL.40   2004年もお世話になりました 

ASIA NEWS   ゴラゴットさんの現地発行タイ新聞雑誌から最新情報

スパイシータイランド  在タイ10数年 ジャーナリストM.Kさんの「ボゴールのイヌワシ」

タイの芸能界の話題  T-POPが日本でブレイクする日 by タイで想う日々

from Los Angeles 復活する?徴兵制  bu MIKA

男と女のお話 自分らしく生きるため by Tamami

ベトナム名物 ヤギ鍋のお味は by Abe

Asia Center in INDONESIA  稼動開始! 新拠点