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Mrs.JUNKO の 《バンコクは夢の中》 |
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朝ベッドで目を覚ますと、キッチンからメイドが働く気配。トントントンと野菜を切る音。どこからともなく漂うコーヒーの香り。あなたは起き上がり、光あふれる窓外の風景をゆったりと眺め、ベッドの中でまどろんでいる夫や子供達を起こす・・・・・・。 大金持ちにでもならなければ一生無理、と思われるだろうこんな生活を、普通の主婦である私はこのバンコクで手に入れた。 メイドのいる生活。この文章を読む殆どの方から反感を買うような生活を、私はもう10年間も送っている。 外国人駐在員家庭のほとんどはメイドを雇っている。これは多少、タイ社会への貢献にもなっているらしい。メイドという呼び名を何故か日本人家庭では「アヤさん」と呼ぶ(語源はわからない)。タイ語では、「メーバーン」。「メー」は「お母さん」「バーン」は「家」のこと。つまり通常主婦は「メーバーン」である。 私はこの10年、日曜日やお正月などの休暇を除いて殆ど、食事の支度、掃除、洗濯やアイロンがけをしていない。夢のような生活? 確かにそうかもしれない。ただそれと同時に人を使うことでのストレスも感じてきた。人を雇う事は考えていたよりも遥かに大変な事であった。 海外生活をする人にとってのバイブルとして薦められた、犬養道子著「日本人が外に出るとき」(中央公論社)という本の一節にこうある。 『人を使うより、使われる方がずっとらくです。人を使うより、人手ナシで困る方がずっとらくです』 本当にそうだと思った時期もあった。洗濯をしてもらって楽だ・・・と思う瞬間よりも、白いシャツが赤くなってしまう事の方がどんなに気が滅入るか・・・。 自分が掃除をしている時には、目をつぶってしまうほこりでも、メイドが掃除をした後には指でそのあとを、なぞっていたりする。 最初の頃は自分でやった方がどれだけ気が楽だろうと思ったりもしたが、10年という歳月は、人間を隋楽させるには、十分すぎる年月だ。 家の中に他人がいるという事で常に緊張し、いつもどこかで彼女の気配を感じていたはずの毎日が、年月と共に空気に似た感覚となり、今では、彼女の前でも寝ている事ができる。 私はこの10年間で4人のアヤさんと共にタイ生活を過ごしてきた。それぞれ彼女たちの環境は違っても私はその都度、幸せだったのかもしれない。いつの日か、私が日本へ戻り自分自身が「メーバーン」として活躍する日がくると思うが、その時に彼女達以上に家族を思い、全てをこなす事が出来るとは思えない。そう思うと、このバンコクでの生活が1日も長く続く事をただ、ひたすらに祈るほかはないのかもしれない。
2004年5月10日 バンコク Mrs. Junko Tsuboi |
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