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日清四天王の挑戦 こ、これは「きつねどん兵衛」ではないか....。最近発売開始となったタイ産カップヌードルの新製品。タイ語の商品名を直訳すると「うどん麺・甘い豆腐味」(十五バーツ)。ピンクの桜もようをちりばめたカップ麺としてはやや異色のパッケージにひかれ、これはいったい何だと試食してみたところ、なんと中身はあの「きつねどん兵衛」であった。移り変わりの激しい日本のカップ麺業界で、チキンラーメン、カップヌードル、UFOとともに日清四天王の一角として愛され続けているロングセラー「どん兵衛」。この日本ならではの味「カップうどん」がいよいよタイに上陸したというわけだ。私は感動した。これはまさに革命である。
日清四天王のうち、カップヌードルとカップ焼きソバは既に若干モディファイされてタイの市場に出回っている。カップヌードルはムーサップ(ポークミンチ)味やトムヤム味など多彩なフレーバーでタイ市場に確固たる地位を築いているし、カップ焼きソバも日式とタイ式の2種類がかなり前から発売されている。しかし、貧乏学生のころカップ麺をよく食っていた人間に言わせると、タイ産カップヌードルは日本のオリジナル版からかなりかけ離れてしまっている。例えばオリジナル・フレーバーに欠かせないあの四角いくちゃくちゃしたタマゴや背わたの残ったホシエビ、あの摩訶不思議なミンチボールなどの重要なアイテムが欠落しているし、味つけもかなりタイ人仕様となっている。これは企業戦略としてはもちろん正しい。日本のカップヌードル並みに具に力を注いでいてはコストが合わないし、インスタント麺はタイにもかなりのブランドが普及しているので、タイ人好みのフレーバーにしなければシェアは奪えない。その結果、タイ人にはそこそこ受け入れられはするが、日本人には「日本のとなんだか違う」ものになってしまうわけである。ついでに言わせてもらうと、あれだけのレパートリーがそろっているにもかかわらず、いまだにカレー味がないのが寂しい。あれはタイ人にも受けるような気がするのだが、いったいなぜ出ないのであろう。
カップ焼きそばの方はというと、日式になるとかなり日本のそれに近く、日本人のファンも多いのだが、非常に残念なことに青のりの中に乾燥紅生姜が入っていない。焼きそばと紅生姜という組み合わせは日本人が生み出した至上の組み合わせのひとつだが、この薬味や香辛料というのは国民の嗜好性がかなり極端に出る部分であり、さすがにタイ人に乾燥紅生姜を食わせてみようという冒険はできなかったのだろう。しかし、日式のマイルドな味はあの紅生姜によってぐぐっと引き立つ性質のものであり、ないとなると物足りない。これならいっそピリっとしたタイ式の方がいいのではないかということになり、事実、スーパーマーケットではタイ式のカップ焼きそばしかおいていないところが結構多い。日式カップ焼きソバが完全に市場から駆逐されぬよう願うばかりである。 ![]() さて、今回登場したカップヌードルの新製品「うどん麺・甘い豆腐味」である。食してみるとわかるが、これは見事に「どん兵衛」の味を再現している。もちろん100%丸大豆のジューシー&ふっくら油揚は入っていないし(3センチくらいの小さな油揚が入っている)、麺も日本のそれに比べるとやや細い。物足りないは物足りないのだが、味がほぼ「どん兵衛」そのままなので代替品としてかなりの満足感が得られる。これまでに「カップうどん」という商品がタイに流通していなかったため、あれこれタイ人仕様に改良などせず、あえて「日本の味」で勝負しようとしたのであろう。保守的なタイの市場ではかなりの冒険である。この「カップヌードル・うどん麺」にはもうひとつ「天ぷら味」なる姉妹品があるが(これも3センチくらいの小さな天ぷらが入っている)、実は姉妹ともにピリっと辛い(天ぷらの方がかなり辛い)。なんだ、ピリッと辛くてはタイ人仕様ではないかと言われそうだが、うどんには我々日本人も七味を入れる。辛いは辛いがそれが七味風であるため、日式カップうどんとしてのオリジナル風味がそのまま保たれるという偶然をみたわけである。従って今回出た新商品2種はいずれも「七味入り」という前提で食さなければならない。
いずれにしろ、幼少時代にそばアレルギーのせいで家族の中でひとり年越しソバ代わりに「きつねどん兵衛」を食べていた私にとって、この懐かしい味が十五バーツで手に入るというのは画期的な出来事である。日本に帰るたびに買わなければならないアイテムがこれでまたひとつ消えたのだ。スクムビットのフジスーパーで輸入ものの「どん兵衛」を買えばいったいいくらするか。驚くなかれ百十二バーツである(セールでたまに七十八バーツとかになる)。日本円にそのまま換算しても三百円。タイの通貨価値を考慮すれば千円する感覚である。いくら好きでも千円払ってカップ麺を食うわけにはいかない(それでもしっかり棚に並んでいる。子供が欲しがるのだろう)。 はたしてタイ産「きつねどん兵衛」はローカルマーケットで生き残ることができるのか。その健闘を願ってやまない。
日清四天王のうち、とりあえず3つは出そろった。残るはもちろんチキンラーメンである。世界最初のインスタントラーメンとして、その開発者、安藤百福の名をも世界に知らしめることになったチキンラーメン。本来はあれこそ、いの一番に海外に進出すべき味ではないか。ふわふわタマゴの入ったカップ麺の登場はまだ期待できそうにないが、とりあえず袋麺だけでも登場して欲しい。来たれ、チキンラーメン。数万人のバンコク在留邦人のうち、少なくとも100人くらいはチキラーの登場を待ち望んでいるであろう。 |
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