バンコクのバス事情   By Tamami Kawahara

VOL36
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先日、サイアムスクエア前のバス停での事である。

 夕方の渋滞時、バス停の100m以上手前から、バスが何台も連なっていて、一体、どこがバス停なのか、わからないような状態であった。

 その中にあった「カオサン方面行き」のバスに乗り込む為に、若い日本人のツーリスト3人が、車と車の間を縫うようにしてバスの方へ向かっていた。しかし、この3人がバスに乗り込む前に、バスは走り出してしまった。

 日本のバスならば、乗車しようとする人がいる限り、バスは停まって待っていてくるが、バンコクのバスはそういうわけにはいかない。バスを、3人の日本人ツーリストは必死で追いかけ出した。

 追いかけながら「おい!止まれよぉ!」「ちょっと、待ってよぉ!」と、バスに向かって日本語で怒鳴っているが、もちろん、車掌や運転手に、その言葉が通じるわけもない。

 そのうちに、一番前を走っていた日本人の青年が、スピードを落としたバスに追いつき、バスの扉部分に手をかける事に成功!

(バンコクのバスには、エアコン付きとエアコン無しがあり、エアコン無しのバスは、車内の暑さの為に、ドアを開けたまま走るのが通常である。)

そして、なんとかバスに飛び乗ろうとしたが、やはり人間の脚力では、走行するバスのスピードに勝つ事はできず、逆に、バスに引きずられるようなかたちになってしまった。

 バスの入口の上から、車掌が「危ないから、手を放して下さい!後から来るバスに乗るようにして下さい!」と叫ぶが、車掌の叫ぶタイ語は青年に伝わらず、青年は、ひたすら、「止まれぇ!止まってくれぇ!」と怒鳴り、その手はバスの扉をしっかり掴んだままだ。

この事態を、サイアムスクエアのバス停付近にいた百人からの群集は、固唾を呑んで見守っていた。

 この根競べは、前方の信号が赤に変わる事によって、バスが停車し、その青年はもちろん、後から走って追いかけて来た日本人女性2名も無事にバスに乗る事ができ、一見落着したが、もし、赤信号にならなかったら、この青年は、バスから振り落とされて、大怪我をしていたかもしれない。

バンコクのバスは、「乗る人がいても、バス停で止まらない」「スピードを出しすぎる」「スピードを出しすぎて、降りる人がいるにもかかわらずバス停で止まれない」「運転が乱暴」等は、当たり前で、バンコクに住む庶民は、どういうタイミングでバスが止まってくれるか等を、多分、肌で覚えて、一時停止しているバスに、さっと飛び乗ったり、徐行しているバスから、チャッと飛び降りたりしている。

一見、簡単そうに見えるが、決して簡単な事ではないのだろう。とりあえず、前出の日本人ツーリスト達のように、バンコクのバスに慣れていない人達にとったら、チャレンジするべき事ではないと言いたい。

また、タイの道路交通法においても、走っているバスに無理矢理飛び乗ったり、バス停以外の場所でバスに乗る事は違法とされているので、上記のようなケースで交通事故に至った際、「本人の過失」という事で、保険の対象にもならない場合もあるので、要注意である。

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