M.K

VOL.34
TOPへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOL.34
TOPへ

 

 

 To Be Number One」(イチバンになるために)

              (#おそれ多くも尊称を略させていただきました)

最近、エルトン・ジョン風のリズムでタイのテレビで流れている歌が気になっています。曲のタイトルは「To Be Number One」(イチバンになるために)です。

歌手は、プミポン国王の孫娘です。

プミポン国王には、一男三女の子供がいます。世継ぎ候補として有名なのはワチラロンコン皇太子(長男)とシリントーン皇女(次女)ですが、話題にのぼらない長女については、ずっと疑問でした。聞くと、長女はアメリカ人と結婚したために、プミポン国王がロイヤル・ファミリーから破門したという経緯があるということです。

その長女が、どうしたのかアメリカからタイに戻り、ここ2〜3年前から国王ファミリーの写真に登場するようになりました。その娘さんが歌手として、「To Be Number One」を歌っているのです。

それにしても「To Be Number One」というのは考えようによってはとても意味深です。

豊かで美しい国土を持っているタイだから、切磋琢磨して頑張れば、タイ国、タイ人が、世界でイチバンになれるはずですよというふうな歌詞内容ですから、ただの愛国歌だと解釈すれば悩む必要はありません。しかし、歌っている本人や、テレビ画面に一緒に登場する皇女(長女)のステータスを考えると、いろんなことを考えてしまいます。

いずれやってくる次期国王の選択騒動に想いを馳せてしまうのは、そのことがタイ王国の浮沈に大きく関係するからです。タイに拠点をおく者として、これ以上の下衆の勘ぐりを書き込むと、不敬罪になりそうなので止めておきます。

そんなこんなで、タイの人たちは時流をアレンジして歌にするのがとても上手です。

 「Made in Thailand」という歌が流行した1970年代は、テレビも車も何もかも、外国(日本)製でタイ製のモノなんか何も無いというふうに日本製品不買運動に火をつけました。高度経済成長バブルで日本企業がアジアへ猛烈に進出した頃です。

 しかし、日本とタイの経済が一蓮托生の関係になってくる1980年代には、日本の演歌そのままでタイ語に翻訳した曲が流行ります。タイ人も日本人も同じアジアの心を持っている、仲良くしよう、ともっともらしいプロパガンダがあるかもしれません。70年代の雰囲気なら、歌まで外国(日本)製というふうに批判されていたでしょう。戦争時代の日本軍将校コボリと自由タイ運動にかかわるタイ女性アンスマリンの悲恋物語クーカムが、人気歌手トンチャイ(通称バード)の主演のおかげで空前のヒットになります。トンチャイはドラマのなかで「竹田の子守唄(Seven Days in Japanと訳されていますが…)」を哀感たっぷりに歌い上げ、異国の空の下に暮らす私なども思わずホロリとさせられてしまいました。

 そして90年代から2000年代初頭に、どんな曲が街角で流れているのでしょうか。

 タイ通貨の暴落を受けて国際通貨基金IMFを揶揄した曲、世界の何処にいようがラオ・ペン・コン・タイ(私たちはタイ人)という出稼ぎタイ人に望郷心を呼び起こす歌、オサマ・ビンラーディンを捩った曲、…。いまのイラク戦争や新型肺炎SARS騒動なんかも、すぐに歌にアレンジされそうです。

 タイ歌謡史から読みとるタイ社会の変遷。それをやるには私のレパートリーは少なすぎるので、この辺で話題をすりかえます。

先日、タイ政府直営放送局のエグゼクティブから、ある相談を持ちかけられました。上司(つまり首相)から司令を受けたわけではないけれどもという前置きをした上で、外国人記者の報道でタクシン首相の人気が芳しくないが、イメージアップするにはどうしたら良いだろうかというのです。エグゼクティブ曰く、首相は外国人記者が批評するほどに悪い人ではないから何とかしたいと…。聞く相手が違っていると退席するところですが、このエグゼクティブとは長い知り合いなので、どう返事をしたら良いか困りました。

イラク戦争など、アメリカ政府はメディアを利用しての見え見えの情報操作(あるいは捏造)を行っていて腹立たしくて仕方ありません。すでにボロがでていますが「感動した!」小泉首相はメディアの活用がうまい人であるともっぱらの評判です。タクシン首相もそうした範に習ってメディア戦略というか情報操作に乗り出したのか…。

いまタクシン首相が外国人記者から批判の矢面に立たされているのは、人権などを無視した強引な麻薬撲滅キャンペーンWar on Drug(麻薬戦争)です。これは“悪”との戦争だから裁判など必要ないと、今年2月1日から3ヶ月間のキャンペーン期間に2,000人あまりの被疑者が殺されています。そのなかには罪の無い子どもまでが巻き添えになって死んでいます。冤罪もあるはずです。しかし、ブッシュの対テロリスト戦争が、疑わしきは罰す、査察も裁判も国連も必要なしという無茶苦茶なものであることに加勢を得て、タクシン首相も強引です。

せっかくフリーランスでいるのだから、良いことは良い、悪いことは悪いと自由に言える立場をできるだけ持ち続けたいと思っている私にとって、タイ政府放送局エグゼクティブの相談に迂闊に乗るわけにはいきません。かといって、その場で首相や相手の批判をするほど正義感にあふれているわけではありません。同席した知り合いの外国人記者たちにエグゼクティブとの会話を押し付け、寡黙になった私の頭はぐるぐると渦をまいています。

このとき私の頭のなかに「To Be Number One」の旋律が流れてきたのです。

“首相がこれを歌うと失笑をかって、人気はガタ落ちだろうな”

“歌うのなら〜あんたが一番、わたしは二番、はぁ〜ドンドン!〜という「すごい男の唄」の方がいいだろうな”

視点を宙に、黙ってニタニタと笑う私を気色悪がって、エグゼクティブは私への相談をやめました。

しかし反省しています。

こういう見ざる、聞かざる、言わざる態度が独裁者を生むのかもしれない、と。(MK)

VOL.34
TOPへ

 

 

VOL. 34 の内容

 

クリックするとコーナーに

ASIA NEWS   ゴラゴットさんの現地発行タイ新聞雑誌から最新情報

Los Angeles    GPA usa 荻原さんからの機材事情

スパイシータイランド  在タイ10数年 ジャーナリストM.Kさんの「一番になるために」

YUKAさんの感じるタイランド  タイに憧れて留学生活中、恋愛?愛人事情