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2001.10.1発行
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今月の内容


 アメリカテロ、映画のような事件が現実に起こってしまいましたが、みなさんはどのように受けとめていますか?

 タイでも、もちろん毎日報道されていますが、ここバンコクは直接あまりかかわりがないという事か国民達は普段とあまりかわらず、また事件の話もあまり聞かれません。きっとイスラム教徒が多く住む南タイでは受け止め方に違いはあるのでしょう。 

 バンコクで、事件の影響が見えるのは、金(ゴールド)を買い漁る人達がいる。24時間オープンのガソリンスタンドが夜12時で閉店するようになったなど、多少ですが変化がおきています。そしてタイ国観光庁長官の発表によりますと、アメリカ人観光客を年間50万人と見込んでいたものの、同時多発テロの影響がアメリカのみならず同盟関係にあるヨーロッパにも波及して今年の観光客は減少するという見通しを発表しました。(タイには年間で観光客数、約1000万人)観光収入がかなりのパーセントを占め経済への大きな影響を持っています。この減少により国の新規市場開拓計画の中止、他いろんなプロジェクトの中止などが決まっています。
 タイでは観光収入の減少を早くくい止めたいと思っているのですが事件の解決はいつになるのでしょうか? 

 さて私、カメラマンの大原です。タイに来て早くも1年が過ぎました。以前、仕事で何度か訪れたことはありますが、実際住んでみると、今まで分からなかった部分が見えてきました。
 バンコクの幹線道路であるスクンビットにオフィスはあります、私が住んでいるのはオフィスから空港方向にバスで30分ほどのワンルームマンションです。
 家賃約1万4500円、プール付き、24時間セキュリティ、駐車場無料という感じです。 このようなスタイルはバンコクではごく普通にあり珍しい物件ではありません。

 私の部屋の隣はレディーボーイ(おかま)が母親と住んでいますとても美しく、スタイルも抜群で、どこから見ても女の人なのです。  
 またマンションの住人は多国籍にとんでおり見ていて面白い事があります。 私の仲の良い住人にパキスタン人男性、タイ人女性がいます。 私と話す時の言葉は日本語になります。

 面白い事にこのパキスタン男性とタイ人女性2人の会話も日本語なのです。最初はなぜ!と思いました。両人ともに過去に日本で仕事をしていた経験がありその時に日本語を覚えたそうです。そのため2人の共通の言葉は英語ではなく日本語ということなのです

 インド人、白人、フィリピン人、韓国人、そしてタイ人と本当にいろんな国の言葉が飛び交っている私が住むマンション、日本では味わう事の出来ない光景ですよね。マンションの周辺も屋台などが多く出ており味のほうも結構いけます。

 すっかりタイという国に溶け込んで毎日充実した日々を送っているこの頃です。

 そんな充実した気持ちでみなさんとお仕事出来る日をお待ちしています。

    バンコクohara


 

     


 

(M.K)

 アメリカでの同時テロ多発事件は、タイをはじめ東南アジアの国々にも大きな影響を与えています。すでに新聞やテレビでアジアの国々のリアクションも紹介されていますが、もっとローカルな視点で話題を拾ってみました。テロの犠牲者の立場からすれば、ちょっと不謹慎な表現があるかもしれませんが、犠牲者に対する追悼とテロ行為否定が大前提にあることを事前に申し上げておきます。

「豚の油爆弾」

 アメリカがタリバン政権に対する報復攻撃を世界に同調を求めるさなか、あるタイの上院議員がブッシュ大統領にメールをしたためました。“報復にはミサイルも核兵器も必要なし。豚の油の爆弾で十分である。人命を大切にして欲しい…”というような内容です。メールを書いたものの送信を戸惑っているうちに第三者に見られてしまい問題になりました。くだんの議員にしてみれば、血で血をあらう報復の応酬を避けて欲しいという気持ちだったのでしょうが、“豚の油”という表現がこの議員の致命的ミスでした。報復はテロに対してであって、イスラム教に対してではないのです。結局、他の議員たちの糾弾があって、この上院議員は辞職に追い込まれました。仏教国として知られるタイですが、南部を中心にイスラム教徒も多くいます。スリン前外相なども南部出身モスリムです。ちなみにスリン前外相は、タリバンによるバーミアン仏教遺跡破壊に対して先頭に立って抗議しています。テロ糾弾が、いつのまにかモスリム批難にすりかわっていることにタイ・モスリムは懸念を感じています。対テロが、対モスリムや対アラブに転嫁してゆく雰囲気は危険です。

「友人の冤罪」

 同時テロ事件の起こった9月11日、私はスリランカのテレビ局の仕事でフィリピンにいました。9月14日に米軍基地撤退十周年記念集会がアメリカ大使館前で行われ、今回のテロ事件のフィリピンの人たちの考えを知るために友人のインド人ジャーナリストとともに取材にいきました。集会は“テロは否定するが、アメリカの軍国主義も否定する”という趣旨で平穏に行われました。そのとき友人のインド人ジャーナリストが警察の尋問を受けて連行されそうになりました。彼の風貌は髭面でアラブ人のようです。すでに、アラブ人=テロリストというステロタイプ化が始まっています。彼が警察の尋問を受ける姿を地元のTV局や新聞社が撮影取材していたので、夜のTVニュースを見てみました。ニュースでは、米軍基地撤退十周年と友人の尋問の話は全く切り離されて紹介されていました。

“テロ事件で厳戒態勢の米大使館。不審者を尋問!”

 テポドン事件後に在日朝鮮人学生たちが謂われもないイジメを受けたように、彼は道を歩いていても“ビンラディン!”と罵声を浴びせられたりして散々な目に遭っています。空港ではチェックインのときにパスポート・コピーまで取られる始末です。行動を共にしていた私の方は警察の尋問もパスポート・コピーも無縁です。私のパスポートにはアフガニスタンの渡航暦も記録されているのですが…。

「ビンラディン夫人」

 フィリピンはオサマ・ビンラディンと無関係ではありません。

 ミンダナオを拠点にするモスリム武装ゲリラ“アブサヤフ”はアフガニスタンの軍事教練キャンプで訓練をしています。そしてビンラディンから武器の供給も受けています。アブサヤフといえば、欧米人旅行者たちの拉致誘拐事件で一躍有名になりました。パラワン島リゾートでの誘拐事件は継続中ですし、海を越えてマレーシア・ボルネオ島リゾートで起こした誘拐事件は連日CNNやBBCで報道されました。そうしたリゾートにたまたま日本人がいなかっただけで、日本人がアブサヤフに誘拐された可能性は十分あります。

 中国から支援を受けていた共産主義ゲリラNPA(新人民軍)などが政権に投降し弱体化してゆくなかで、アブサヤフやモロ解放戦線などのモスリム・ゲリラはどんどん勢力を伸ばしています。NPAが中国の援助を失って経済基盤をなくし弱体化したことでわかるように、これといった収入源のないゲリラが海外からの援助なしに存続するのは無理です。タイ周辺では、麻薬、木材、宝石といった地下の財源が反政府ゲリラの活動を支えているケースもあります。しかしフィリピンでは海外からの資金援助なしには勢力の維持は難しい。つまりフィリピンのモスリム・ゲリラはビンラディンなどのムスリム同胞の資金に頼っています。ムスリム同胞からのジハード(聖戦)呼びかけがあれば、ともに立ち上がる立場にあるわけです。テロに対するアメリカの報復が、対モスリムに転嫁すると中東だけでなくフィリピン、インドネシアなどにも飛び火する可能性があります。

 アメリカのテロ事件直後に、フィリピンの新聞はアブサヤフのリーダーたちの指名手配書を写真入りで一面に載せ始めました。その記事の中に、オサマ・ビンラディン夫人のことが書かれていました。ビンラディン夫人はミンダナオのアブサヤフとともにいる。なぜ?どんなふうに夫と連絡をとっているのだろうか?ビンラディン夫人に会いたい。しかし、誘拐され高額な身代金を要求されるのを覚悟の上に、夫人に会うだけの度胸と財力は私にはありません。そして、このタイミングで夫人に会うのは、ちょっと下世話なので二の足を踏んでいます。

「連動する世界」

 先日ベトナムのラジオ局VOV(ボイス・オブ・ベトナム)のバンコク支局長と会食をしました。インドシナ戦争時代から現在までもCIA(アメリカ中央情報局)のベトナムでの情報操作およびテロ扇動は目にあまるものがある、といいます。先般の在タイ・ベトナム大使館爆破未遂事件などもCIAとの関連が濃厚です。こうした裏情報を聞くにつけ、今回のテロ事件についてのアメリカの一方的な報道を鵜呑みにするわけにはいかないな、と思うわけです。

 このベトナム人記者は、米越国交回復がようやく軌道にのりアメリカの投資が伸びようというときの事件で、経済の成り行きを心配しています。インドネシアはメガワティ大統領が事件後すぐにアメリカ訪問し全面的な協力を約束する反面、国内ではアメリカのアフガン攻撃が始まればイスラム勢力が反米暴動を起こす勢いです。タイでは、テロに巻き込まれる危険のあるアメリカへの旅行をタイへ振り替えさせようと旅行者誘致キャンペーンを始めました。

 イスラム教VSキリスト教、アメリカ人VSアラブ人というような対極構図で紛争を煽る情報が蔓延するなかで、多極な視点の情報を集めたいと思っています。

 

 


 

シアン化ビニルの恐怖

 タイは農業人口の占める割合が高いせいもあり、環境保護に対する意識は比較的高い。しかし、汚染や有毒物質に対する知識はまだまだ浅く、しばしば人災ともいえる環境汚染事故が発生する。9月5日未明、バンコク都内高速道路を走っていた大型トラックが横転、積荷のシアン化ビニル(アクリルニトリル)3トンが漏出した。事故現場近くには視覚障害者施設や学校があり、一部の子供たちがノドや目の痛みを訴えて病院で手当てを受けた。化学剤で中和させなくてはならないシアン 化ビニルを水で洗い流すなどのずさんな事故処理に批判が集まった。保健所の対応も極めて遅く、職員が現場の大気汚染をチェックしに来たのは事故発生後一〇時間以上が経過した後だったという。写真は現場近くの保育施設の子供たち。有毒ガスなどとうてい防げそうにない安っぽい布マスクがかえって不安を誘う。

見せしめ

 タクシン政権が発足して以来、麻薬密売人への死刑宣告が相次いでいる。刑執行直前の死刑囚の姿をテレビ中継するなど、その目的は見せしめによって麻薬犯罪を減らすことにある。今回はうら若きウクライナ人女性が死刑を宣告された。外国人であろうが女性であろうが容赦はしませんよというわけだ。ブツはヘロイン1キロ。この女性は本国で医師免許を持っているインテリで、運び屋を頼まれただけと言い張ったが運悪く見せしめのネタとなった。タイの刑務所にはかなりの数の日本人が服役しているというが、この調子だと日本人への死刑宣告があってもおかしくはない。

エビ養殖の是非

 タイでは98年から、内陸部でのブラックタイガーエビの養殖が禁止されている。養殖に使う化学薬品が周辺の土壌を汚染し、稲作などに深刻な影響を与えるためだ。しかし、今年に入って養殖解禁論議が高まってきた。理由はもちろん金。不況で輸出が伸び悩んでいるため、エビで巻き返しを図ろうというものだ。エ ビはコメよりカネになる。

タイ最大の食品企業、CPグループが土壌汚染を引き起こさずに養殖できる淡水エビ(写真)を開発したと発表したことも解禁派への追い風になった。しかし、解禁反対派には強い味方がついている。国王陛下が解禁にいい顔をなさらないのだ。陛下のゴーサインが出ない限り、養殖が解禁されることはない。聞くところによれば、輸出用はともかく、国内市場向けのブラックタイガーは抗生物質まみれ。シーフード屋でエビを食うなら海でとれた白いエビの方が安心だとか。

百万バーツの焼きそば

 タクシン首相は9月日、チャイナタウンで開かれた観光フェスティバルに飛び入り参加、「タクシン式焼きそば」で見事な中華鍋さばきを披露した。キャベツ、キノコ、エビが入った首相特製の焼きそばは100万バーツ。鍋の大きさが20人前として一皿5万バーツ。味の方もかなり本格的だとか。ちなみにこの100万バーツは洪水の被害を受けた北部地域の人たちに寄付された。

 

 

戦う王妃スリヨータイ

話題のオカマ青春映画「アタックナンバーハーフ(原題:鉄の女)」の全米公開も決まり絶好調のタイ映画界。8月にはついに話題の「スリヨータイ」が公開となった。ビルマ軍との戦争で活躍したアユタヤ王朝の王妃を描いたスペクタクル大作だ。制作費は国産映画としては過去最高の4億バーツ。スリヨータイをこよなく尊敬されているシリキット王妃が熱心な支援をなされた。

 

 封切りから1カ月ちょっとでを興収5億バーツを突破、「タイタニック」の興業記録約2億円をあっさり塗り替えた。海外での公開に向けても着々と準備が進められている。ただやや国策物の観がある「スリヨータイ」が海外でどれだけの評価を得られるかは疑問。業界では「アタックナンバーハーフ」の方に大きな期待が寄せられている。

ワニの缶詰

 ワニ肉がけっこううまいというのは食通のだれもが認めるところ。しっかりした歯ごたえがあり、へんなクセもない。トリのような魚のような、といった感じだ。これまではベルトやハンドバッグのイメージが強いために食用としてはあまりポピュラーではなかった。最近、ベンチャーテック・マーケティングという会社がワニ肉の販売を開始した。缶詰に冷凍肉、乾燥品など。  

 狂牛病や口蹄疫の流行もあって欧州あたりで需要が拡大している。カロリーや脂肪分が少ないため、健康食品としても注目を集めているらしい。

巨大泥流

 タイは毎年夏になるとどこかで洪水が発生する。今年は北部ペチャブン県が大災害に見舞われた。8月11日、大雨で発生した巨大泥流がロムサック郡などの村を押し流し、百人以上が死亡する大惨事となった。未明のできごとで逃げ遅れる人が多く、死亡者が膨れ上がった。毎年起きるはずの洪水になぜ何の対策も打たなかったのか。実は当地でこれほど大規模な泥流が発生したのは初めてのことで、まったく予測不能だったらしい。森林伐採による山のスポンジ機能低下という人災的な側面が指摘されている。  

性転換手術の神様

 タイはシンガポールと並び、性転換手術のレベルが高いことで有名だ。特に最近脚光を浴びているのが南部リゾート地、プーケット。ここには見事な神技で男性器からクリトリスを作るカリスマ医師がいるという。うまくいけば性感だけでなく、オーガズムまで得られるとか。この腕前を求め、世界各国から自分の性に疑問を抱く患者たちが押し寄せる。西欧諸国の人は社会差別の存在からあまり早い時期に性転換手術を受ける例は少なく、40才を超えてからやっとという人が多い。中には60や70になってからという人もいるらしい。死期を間近に控えてやっと自分を解放できるというのもなんだか悲しい話ではある

長髪仙人

 その長さたるや実に5メートル80センチ。世界一長い髪をもつ人間としてギネスブックにも認定されていた北部山岳民族のフー・センラオさん(77)が死亡した。 

髪はある程度伸びると自然に抜け落ちるもののはずだが、いったいどうすればここまで伸ばせるものなのだろう。先端部にちゃんとキューティクルは存在したのだろうか。ちなみにフーさんには10歳年上の兄がおり、実は彼も5メートルの髪を引きずりながら生活している。フーさんの死後は、この兄が世界記録樹立を目指してまた日夜髪を伸ばし続けるのだという。

深夜営業規制

 タクシン政権になって迷惑を被っているのは麻薬の運び屋だけではない。夜遊びの好きな人や夜の店の経営者たちも渋い顔をしている。パブやオカユ屋やディスコなどの深夜営業に対する規制が強化されているのだ。これまで深夜3時や4時が当たり前だったのに、最近は1時2時で店を追い出されることが多くなった。写真はアイスボックスに入れたビールをちゅうちゅうやっている人たち。

 ある時間以降のアルコール販売が禁止されたため、警察の目をごまかそうとしているわけだ。南国タイで夜間の労働人口が多いのは当たり前。それを無理に「はい今日からは1時まで」といってもそれは無理な相談だろう。実際、深夜営業規制に対する反対の声は日増しに高くなっている。早かれ遅かれ、夜の働き者たちはこの不粋な規制を打ち破ることだろう。

 

首相の息子

 日本でコイズミ首相の息子が週刊誌で騒がれているように、ここタイでもやはり首相の息子は話題の的だ。タクシン首相の長男、パントンテー君。コイズミ・ジュニアと同じように二枚目な上、なんと彼はタイ・ナンバーワンの株長者。

 最近はパフォーマンス好きの父のそばでマスコミへの露出度も高くなり、見られることも板につき始めたようだ。

 写真は南部トラン県で開かれた焼き豚祭りに父とともに参加、焼き豚そっちのけでハーフのタレントとツーショットを決め込んでいるところだ。このイベントで父のタクシン首相は野党リーダー、チュアン前首相宅への表敬訪問をすっぽかしてマスコミから非難を受けていただけに、自分が目立つことでマスコミの目を父からそらすという親孝行ぶりを発揮したわけだ。首相の息子、恐るべし。すでに帝王学の伝授が始まっているのかもしれない。

 

物乞いワンちゃん

 少し前、流行発信地、サイアム・スクエアに犬の物乞いが現れて話題になりました。紙コップを前においておとなしく鎮座し、通行人がお金を入れるとよく仕込まれたものでワンとほえるのだそうです。茶色い毛並みが美しい育ちのよさそうな雑種犬で、学校帰りの女学生が「きゃー、かわいいい!」といいながらチャリンと小銭を入れます。 飼い主が横に控えていないのがミソです。本当の飼い主のフリをした輩が紙コップの小銭をかっさらっていく不安もありますが、そのときはきっと番犬に早がわりするのでしょう。それとも少し離れたところから主人がじっと愛犬を見守っているのでしょうか。いずれにしろ、こうなるともう物乞いというよりは大道芸人、いや芸犬です。さて、気になるのはこのワンちゃんの一日の稼ぎですが、これがなんと千バーツを越えるのだそうです。単純労働者の最低賃金が百五十〜百六十バーツの国です。ヤリ手の物乞いはやはり一日に数百バーツを稼ぎ出すといいますが、千バーツはそうざらにいません。世の中には貸しボート屋だとか釣り堀のおやじだとか、のんびり生きたいと願う人たちの理想の商売がいくつかありますが、この物乞いワンちゃんの飼い主というのもなかなか魅力的な商売です。路上にすわりこんだ親子の物乞いは限りなく人を不快にさせます。彼らを無視して目の前を通り過ぎる自分はなにかいやな人間だと錯覚させられるし、彼らのほとんどが同情を引くために意図的に作られた親子だという事実はさらに不快です。

しかし、物乞いワンちゃんなら「きゃー、かわいいい!」ですみます。物乞いは犬にまかせて、あなたたちは人間としての尊厳を取り戻しなさい、みなで協力して物乞いのあふれるこの社会をなんとかしなさい。この犬はきっと、乞う人、乞われる人にそんなメッセージを伝えるために現れたのかもしれません。

一獲千金

 同時多発テロのしばらく後、主犯と目されるビンラディン氏が先物で大儲けしていたという話が世間をにぎわした。しかし、このテロでしっかり儲けていたのは彼ばかりではない。 

ここバンコク、ウイークエンド・マーケットのあるTシャツ屋さんがビンラディン氏のプリントTシャツ三百枚を発売したところ、またたく間に売り切れてしまったというのだ。一枚百五十バーツとしても4万5千バーツ。ゆうに一カ月は遊んで暮らせそうだ。商魂が たくましいのか、状況を深刻にとらぬ国民性のなせるわざか。しかし、ビンラディンTシャツを着て町を歩くのは売るより度胸がいりそうだ。


レッドブル

 タイでよく売れている強壮剤といえば、「リポビタンD」(タイ語では簡単にリポと呼ばれる)、「レッドブル」(クラティンデーン=赤い水牛)、「M150」など。このうちレッドブルは欧州や東南アジア諸国で広く販売されているタイの隠れた代表的輸出品だ。西洋人観光客の間でレッドブルのTシャツがバカ売れしているのも、実は本国でもお馴染みのブランドだからだ。

 しかし、最近になってこのレッドブルを飲み過ぎて死亡したというケースが欧州で報告されたほか、インドネシアも表示量を大幅に上回るカフェインが含まれていたとして輸入販売を禁止した。人気が出過ぎたため同業者が騒ぎ立てているといううわさもあるが、やはり飲み過ぎは体に毒。バイアグラとの塀用は避けた方がよさそうだ。

 

 

 

                         Y.Tくんの杞憂

カウントダウンが始まった。 

 ニューヨーク在住商社マンからのネット掲示板で知りましたが、事件直後にも、ツアーで訪れていた日本人オバタリアンの一行が、ショッピングに興じていたという衝撃的な話を聞きました。

 思えば、、、自爆テロ(神風特攻)という手段を戦争に導入したのは、我が日本人です。人類で唯一原爆の被害を受けたのも、我が日本人です。さらに無差別テロを大都市のど真ん中で実行したのも、我が日本人です。

 今回の戦いがどういうモノであるのかについては、日本人には本来、アメリカ人以上に、本質的に理解できる素質を兼ね備えているはずだと思われます。彼らには決して、自爆しながら敵を殲滅するなどという発想は理解不能でしょうし、無差別テロというのは悪であるという意識が徹底しすぎていて、起こるはずがないモノと決め込んでかかっている節が見受けられます。自分たちこそ原爆も二度も投下しているにもかかわらず、あれは正義のためだからということなのでしょうが、イスラム勢力の側に立って考えれば、湾岸戦争の大空襲を受けた被害者の気持ちは、日本人にも理解ができないはずはないと思われるところなのですが、、、。

 今のところは、人類未曾有の大惨事に遭遇した犠牲者ばかりが強調されているので、白人社会の方が遙かに優勢なようにも見えますが、自由世界のリーダーを自認する米国は、いずれその自由が仇になる時が来るでしょう。ベトナムと同様に、いずれイスラム勢力に共感を覚え始める人もでてくるはずです。ベトナム反戦運動の時と同様に、アフガン産の特性マリファナが大量に米国内に出回る(しかも無料提供?)ことになるのかも知れません(バンコクにも来るかな?)。

 ここ数日間の英米のテレビ放送を見ていると、対イスラムではなく、対テロの戦争であることを声高に叫ぶ論調が目立つようになっています。イスラムの識者だけでなく、ブット前大統領や、スカルノ大統領などの姿が画面には映し出され、「テロリズムには断固として戦う」という姿勢が強調されているようです。

 この背景には、今次の大戦をイスラムとの戦いにはしたくないという思惑が見えるような気がしてなりませんが、それはとりもなおさず、先方(原理主義勢力?)の狙いがこの戦いを「イスラム聖戦」にすることにあるからに他ならないためかと思われます。

 彼らの狙いが功を奏すことになるのか、否か、、、。パキスタンではすでに大統領自らが、「建国以来最大の危機」を迎えていることを認めています。パキスタンといえば、ご承知のとおり、インドとの熾烈な抗争の果てに、一千万を越えるイスラム教徒が、ポルポト時代のカンボジアを思わせるような民族大移動を経て、現在の地に築き上げたイスラム国家です。

 一方、米国の方はといえば、パキスタンとインドが核開発をして以来の経済制裁を解除しました。これはつまり、(アメとムチということ以上に)インドとパキスタンの核保有を認めるということになるのかと思われます。パキスタンが抱えている危機というのは、(ご承知のとおり)国内の分裂という事態です。認知を受けた核兵器が、どの勢力の手に収まることになるのか、、、しばらくはパキスタンの国内情勢が焦点になるように思われます。

 一方、今回のいさかいでは、いまだに舞台裏のような素振り(?)しか見せていない湾岸諸国では、アラブ首長国連邦がタリバンとの外交関係を断絶しました。湾岸地域では最も西側世界に近い生活様式を誇っているこの国が、そもそもなぜ、厳格なイスラム体制を敷くタリバン政権を認知していたのかについても疑問があります。関係断絶の背景には、サウジアラビアからの圧力があったといわれています。

 国内に強力な原理主義勢力を抱えるサウジやパキスタンとは異なり、国民の大部分が西側世界と肩を並べる生活水準を維持している首長国連邦には、少なくとも国内には原理主義勢力の脅威は(テロ以外には)存在していないことでしょう。いわばアラブ世界を代表して、タリバン政権と関係を結んでいたところが、今度はアラブ世界を代表して、関係を断絶したということになるのかと思われます。

 サウジの王様には間違っても、スカルノ大統領のようにブッシュ大統領とツーショットで画面に登場するような芸当は不可能なはずです。スカルノ女史自身が、自らの立場を充分に認識した上で、この首脳会談に臨んでいたのかどうかは疑問です。いずれこの戦争が激化するに連れ、イスラム教徒の連帯意識が高まれば、真っ先に権力の座から追い落とされることになりそうな気配が感じられるところです。いまだにマハティール首相の発言内容が表面化してこないのも、なにか不思議な感じがしてなりません。

 焦点のアフガンでは、ラディン氏もオマル氏もともに、すでにどこかに行方をくらましているようです。英米の特殊部隊はすでにアフガン国内で北部同盟勢力と共闘しながら、軍事行動を開始させているという報道も見られます。先週末あたりに空爆が開始されるという噂もありましたが、そこへ突然、ローマ法王の中央アジア歴訪が始まりました。

 そもそもローマ法王の外遊史上では今回初めて、ナンバー2にあたる地位の人物をバチカンに残しているという事実が、事態の深刻さを物語っているようにも思われる次第です。

 あれだけ強烈な幕開けを演じた今回の戦いですから、ついついテロリストの次の標的がどこなのか? その手段は? といった疑問・興味への回答を、すぐにでも見せてほしくなる衝動を抑えきれないのは確かですが、しかし、忘れてはならないのははやり、スペクタクル巨編を見ているわけではないということでしょう。

彼ら(テロリスト?原理主義勢力?)にとって現状での最善の策は、ジッと黙って地下に潜っていることかと思われます。なかなか攻撃をしかけてこないようであれば、もう少し挑発することもあるでしょうが、いずれにせよ米国はアフガンを攻撃することになるでしょう。すでに食糧備蓄が数週間ほどしかないというアフガン国民にとっては、たとえ攻撃を受けなくとも、多大な犠牲が発生することになるのかも知れません。

 

 イスラム世界の中には過去にも、アフガン救出のために連帯意識が高まった経歴があります。たとえ相手が史上最強の米軍としても、悲劇的な大損害を受けた米国であったとしても、、、WTCで失われた命と、アフガンで失われゆく命を踏み絵にされたら、イスラム教徒はどちらの側に立つことになるでしょう、、、。さらに追い打ちを

かけるようにして、パレスチナ問題が再燃するようなことにでもなれば、、、。

 今さらながらにアラファトとペレスの会談が再開されることになったようですが、クリントン政権下であれだけ世界の注目と圧力を受けながら妥協をすることができなかった人たちが、この期に及んで手を結ぶことができるようには思えませんし、仮に妥協が成立したにせよ、それはとりもなおさず、実権を失ったアラファトによる単独行動かも知れませんし、、、だとすれば、身内から暗殺される身の危険を犯した行為ということになるのでしょう。

 

 今回の主戦場はやはり、最終的には中東、アラブ世界ということになるように思われます。かつてアラブの盟主と呼び称えられていたエジプトやサウジアラビアには、今やまったくその面影さえも見られません。いまだに中世を思わせるようなこの世界には、民衆を納得させるカリスマ性を備えた英雄が必要でしょう。しかし、西側世界はその英雄を作り上げることができず、アラブ世界の方にも、サダムという西側世界には受け入れることのできない英雄しか持ち得なかったところに、今回の悲劇の発端はあるように思われます。

 

 今次の大戦がどのような結末を迎えることになるのかは、時の経過を待つしかありませんが、仮に泥沼に陥るようなことがあれば、最終的には、マハトマ・ガンジーやマザー・テレサのような、武力とは対局に位置するようなカリスマ性を備えた指導者が、必然的に現れなければならないような気がするのですが、イスラム世界の中では、残念ながら、過去も含めてこういう思想が受け入れられたという記憶はありません、、、。

自分自身の勉強不足ということだけならよいのですが、、、。

 

 まあ、あの大惨事の衝撃を繰り返し見せられ続けてきた後遺症として、イスラム勢力を過大評価しているだけの杞憂であればよいのですが、、、。    


筆者紹介

高橋行雄 バンコク在住

TV、CM、雑誌などのコーディネーター&ライターとして活躍中


 

  by Y・Miki

 

 現在、タイでは訪タイしている外国人が外国人に対して起す犯罪が激増し、タイの新聞紙面を賑わしている。

 記事にならない小さな事件も含めれば相当な数に上ると考えられている。

これからご紹介するのも、記事に成らなかったカナダ人による詐欺事件で、日本人が25,000ドル(約300万円)を騙し取られた事件である。

ノノノノノノノノノノノノ.

 その日本人(以後A氏と称す)のところに、知り合いのアメリカ国籍の黒人コモールが友人だと言って、カナダ人のトミーを連れて来た。

 そのトミーが儲け話を持ってきた。ある組織が高額のドル紙幣をアメリカから持ち出す為に、紙幣そのものにある特殊なコーティングをかけ、見た目には工業用に使わ れる一枚の黒いシートの様に加工して税関を誤魔化し、アメリカから無事にドル紙幣を持ち出したのだが、 出たとたんその運び屋が行方不明になってしまったという。持ち逃げしてしまったのか、他の 組織に横取りされたのか、いまだ真相は不明だが、その黒い紙の一部が何故かトミーに回ってきたという。

 トミーに回ってきた黒い紙の総額は、なんと200万ドルなのだ!日本円にして約2億4千万円!!

 トミーの話では、コーティングを落とす手伝いと、その作業を行なう場所としてA氏の事務所(広い 会議室)を提供してくれれば、謝礼として5千万円を支払うというのだ。

 A氏は半信半疑ながら自分のリスクを考えてみた。話が話しだけに犯罪の匂いがする事と、なぜ、自分達 だけでやらないのか?等の幾つかの疑問点はあるものの、どんなに考えてみてもA氏自身何も失うものは 無いのである。少なくともこの時点では・・・・。それと、最後はやはり欲である。

 翌日、A氏はコモールの携帯に連絡して承諾の返事を告げた。そして実行は事務所の社員が帰宅した後の本日午後8時という事に決定された。

 午後8時ジャスト。

2人が大きな包みとリキッドと呼ばれる液体が入った酒の瓶2本を抱えてA氏の事務所にやって来てコーティングを落とす準備が始められた。

 まず、液を入れるバット、出てきた紙幣を洗剤で洗うバット、そして水洗いのバット(コモール達が用意) が用意され、濡れた紙幣を乾かすヘアードライヤー、皺を伸ばす為に使うアイロンと台、そして大量なタオル。(A氏が用意)A氏も「これだけの準備が必要なのではホテルの一室では無理だろう」と変に納得してしまったのである。

 さて、いよいよコーティングを落とす作業が始まった。トミーが半透明な液体のリキッドにブラックマネーを入れる、コモールとA氏は固唾を飲んで見ている、トミーがバットを細かく揺すっている。 三人が見つめる中、時計で時間を計っていたトミーがリキッドに手を突っ込み紙切れを取り出した。

 出た!!100ドルの紙幣が出てきた!急いでコモールが洗剤で洗いA氏に渡す、A氏も急いで洗剤を洗い流す、そしてドライヤーでトミーが乾かし、コモールがアイロンを掛けて皺を伸ばしA氏に渡した。絶妙なコンビネーションである。

 A氏は渡された100ドル紙幣を繁々と眺めたり、透かしや縦帯を確認したり、本物のドル紙幣に重ねたりして念入りに調べてみた。

 「驚いた!これを見るまで半信半疑だったが、これは紛れも無い本物のドル紙幣だ!!」とA氏と コモールは叫んだ!A氏の脳裏に五千万円の札束が浮かび、手が震えてくるのを感じたという。

 その後も浄化作業を続けて、20数枚を浄化できた時、突然トミーが「Oh!」と素っ頓狂な声をあげた。 どうしたのか聞くと、リキッドが瓶から出てこないという。確認してみると残りのリキッド液が瓶の中で固まっていた。もう一本も同じ状態であった。トミーの話では、リキッドは特殊な薬品で長期間置いておくと科学変化を起し固体になってしまうと説明した。「ただ、このリキッドがそんなに古い物だとは知らなかった」「じゃあどうすんだ?残りのブラックマネーは?」「大丈夫、リキッドを手に入れられるルートを知っているから、でもただじゃあないからお金が必要だよ」「幾らだ?」トミーは一瓶50万バーツだとA氏に言った。「二瓶で100万バーツか」A氏は考えた。

 それでも、この黒い紙を全部浄化できれば、有り余るほどの元が取れる。よし!明日銀行で今日の紙幣をバーツに両替して、本物のドルだと確認が取れたらリキッドを買わせよう、と考えた。A氏は興奮で夜はろくに寝られず、朝になるのももどかしく銀行の開店と同時にドルを持ち込み「何か本物の紙幣に思えないので調べて欲しい」と告げた。結果は本物のドルでバーツと換金できた。A氏はこれで完全に相手を信用してしまったのである。いや、手元にある2億数千万円というドルがA氏の正常な思考能力を奪ってしまったのだろう。

 午後1時の約束通り二人がやって来たので、用意していた100万バーツを渡した。そして、第二回目の作業は翌日午後8時に、新しいリキッドで行う事に決定された。  

 しかし結局、約束の当日二人とも姿を見せなかった。A氏は一瞬「騙されたか?」と不安に思ったがブラックマネーはA氏の金庫に有るので、まさか大金を捨てる事は無いだろうとたかを括っていた。その後、何の連絡も無く数日が過ぎた。A氏はそれでもコモールの携帯に連絡をしたり、宿泊先のホテル(該当者無し)に出向いたりして何とか連絡を取ろうと努力はしたという。そして何の手掛かりも得られずに一週間がたち、焦燥感だけが大きくなっていった。

 A氏は途方にくれた、今回の100万バーツを用意する為に、自分の貿易関係の仕事での前金を使い、足りない分はタイ在住の日本人高利貸し(もちろん、その筋の人である)の金融から短期返済約束で会社の小切手を振り出して借入をしていた。利率は言わずと知れたトイチ(10日で一割)の闇金融なのだ。(タイには多い。この関係の闇金融が)A氏は困った。本来の仕事の資金が廻らなくなってしまったのである。

そして何故、トミーがブラックマネーを持っていたのか、そしてその金は本当のドルなのか?偽札なのか?もし、本物だったら何故?仲間だけで浄化しなかったのか?などの疑問だけが残った。

そして今考えれば、全てが芝居掛かっていた。とA氏は回顧する

 今、A氏は必死になって資金繰りに駆けずり廻る日々である。しかし、明るい兆しは見えていない。私が思うに、全てプロの仕組んだ筋書きだと考える。

 それと、最近の傾向としてはタイ人が外国人に対して起す犯罪ではなく、タイにいる外国人が外国人を騙したり、傷つけたりする犯罪が増えている。

 その中でも、日本の旅行者がターゲットになり易い。日本人は騙し易いと言うのが、外国人犯罪者の共通の意見らしい。日本人は東南アジア系には強いが、白人系には弱いと言うところか。偽札詐欺、美人局、白人女性二人組のスリ、睡眠薬強盗、立ちんぼ強盗などなど、数え上げていたらきりがない。それも相手が白人系だと日本人は簡単に騙されるから不思議だ。

 日本の皆さん!「日本人だから金に任せて何でもできる」という気持ちが外国に出た時に犯罪の餌食になり易い。という事をお忘れなく!


-久米島の翁-

 

 「人生には転機がある」ということを最近あるテレビの番組を見ていて思った。それは、偉人の出ないといわれる千葉県で、たった一人の偉人といわれる伊能忠敬の伝記物だった。

 貧しい家に生まれた忠敬は、幼いうちに養子に出され苦労を重ねる。しかし努力して、傾きかかった養家の商売を建て直し、充分に養家に義理を尽くしたと思われるときに、自分の道をいく決心をした。

 ときに忠孝、五十六才であったという。養家を出て江戸にいった忠孝は、自分の夢だった天文学の勉強を始める。そして誰にも怪しまれずに天文学を続ける方法として、日本地図の製作に取りかかる。

 そしてイギリス海軍が、地図を作ってやるからと開国を迫ってきたときに、江戸幕府が忠敬の地図を見せたら驚いて帰っていったといわれる、立派な地図を完成させたのである。

 この話が、テレビを見ながら自分の人生を考えていた私に、転機を与えるきっかけになった。というのは、奇しくも私もちょうど五十六才だったからである。

 その後ベースにしているバンコックに戻り、カンボジアでの仕事をしているうちに、このこともすっかり忘れてしまった。そしたら仕事の一段落したときに、仲良くしている韓国人ジャーナリストのミスター・ジョンから電話が来た。

 タイ北部の文化都市、チェンマイ市に移るという。新しいアジアレポートの仕事と、家族との生活を考えてそう決断したという。その他かれのビルマ人学生たちとの関りから考えても、その決断には一理があった。

 かれとは、仕事が無いときにいつもコーヒーを飲みながら、アジア情勢を語り合っていた。彼の強い誘いに、かれがいなくなると寂しくなるという理由で、そのうち私もそうしようかななどと生返事をしていた。

 良く考えてみたら、以前仕事を良くしていたドイツ人のジョージからも、同じ誘いを受けていた。かれとはしごとの上でも、個人的な話の上でも非常に馬が合うということでかれがチェンマイに移ったあと、様子見に来いとなん度も誘われていたが果たせないでいた。

 それと、最近良く話し合うインド人ジャーナリストのサティヤも、ジョージと前後してチェンマイに移っていた。かれらの誘いは、人間生活にちょうど好いサイズと緑、それになんといってもこの糞熱いタイでも、とても涼しい気候だという。

 そういえば、打ち続く交通渋滞と、高架鉄道、地下鉄工事、バンコックの最近の夏(乾季)はだんだん耐えがたくなってきている。それに世界的な異常気候。何とかしないと、と考えていたときだった。

 しかし不思議なもので、この転機への気分はここ数年私の周りにあり、自分ではカンボジアのシアム・リアップを終生の地にしようと密かに考えていた。

 しかしなん度も書いているように、現在のカンボジアはベトナムの支配下にあり、特にアンコール・ワットはソキメックという、ベトナムの石油会社(ベトナム軍の軍需会社)に買われた状態だ。

 観光客一人二十ドルの入場料の収入、最低一日で五、六万ドルの収入が死んだベトナム軍の保証のためにベトナムに持っていかれてしまう。

 何をするのもアプサラという、フン・セン直下の、ベトナムとの合同組織の許可なしにはできないという悲惨な状態だ。そんなところでは安心して住めない。私の最愛の地、シアム・リアップはこうして候補から外れていった。

 以前、クンサーというビルマの麻薬王の取材をしたことがある。チェンマイの、子分の案内でいったのだが、そのかれが、何らかの理由で殺されてしまった。

 バンコックの、私の家の周りにもかれらが出没するようになって、私は日本に一時避難をしなければいけない時期があった。そのとき以来、チェンマイは、私の鬼門だった。 

 しかし時代は変わり、クンサーはビルマ軍政と手を打ち、ラングーンに豪邸を建て住み、麻薬取引は子分や子供に受け継がれている。一分五裂の状態で続けられ、一応タイにはあまり負担の掛からない状態となっているが、新たな覚醒剤(ヤー・バー)問題が浮上し、国境で両国の確執が続いていることは以前に書いた。

 これらの状態から、いずれタイとビルマの戦争に発展しそうな国際情勢にあることも書いた。(後に在  タイのビルマ・エクスパートが、チェンマイに集まっているとチェンマイの外国人記者クラブで聞いた。)

 ビルマ軍政の最大の敵、スウェーデン人ジャーナリスト、バートル・リントナーもずっとチェンマイの住人だ。シャン人(タイ・ヤイ人)の奥さんと一緒にだ。

 タイの旧正月、ソンクラーンのあとで、マンゴー・シャワーの季節に、ちょうど子供たちも長い夏休みの最中なので、思い切ってチェンマイに引越しするつもりでやってきた。

 ミスター・ジョンの家に泊まりながら、安い土地を探して、自分でジョージのように家を建てて住む。それが今回の大雑把な目的だった。

 ジョージの家は郊外の森の中にあり、鳥のさえずりと子供たちの笑い声、夕方の木漏れ日の中に浮かぶ古い民家を改造したアンティーク風の家、仕事から戻リラックスするジョージ。

 「決めた。決めた〜。おまえと道ずれに〜。」愚妻の好きな演歌を口ずさみ、彼女のほうを見ると分かってか分からずか頷いている。不思議なことに、イッキに全てが移り住む方向で動いている。あれほどA型の優柔不断で決心のできない私が、確信に満ちてもう決心が出来ているのである。「人生には転機がある」と感じる所以である。

 結論からいえば、まだ土地は見つかっていないが、バブル後のタイで地価は最低の状態だし、古い民家も買えるだろう。子供たちの始まったばかりの中学教育が固定化する前に動きたい。

 以前いったことのあるドイ・ステップというチェンマイの街を見下ろす山に登ってみた。そして、お寺の裏からずっと続くドイ・プイの山奥にモン族の村がある。二十年近く前に訪れたことがある村だ。

 ケシの転換作物としての、コーヒーを売る王室プロジェクト作業員の店ができていたことをのぞいては、なにも変わっていない。二十年近くのときがたっているのにだ。私に喜びがふつふつと沸いてきた。

 二十年前にここに来たときにあった、山の人々の純粋な笑顔。そして、それが無くなってしまう前に、ぜひ人間が美しく生きている様を撮っておきたいと思った若い駆け出しカメラマンの私。

 そので果たせなかった夢が、果たせるという思いがこのチェンマイ・リトゥリートを現実のものとした。いったん退くことはたしかに敗北のように見える。しかしそれは、人生の次のステップへの前進にできるという思いに、今は取りつかれている。(了)